いこい治療院ではなぜ「正座」をすすめるのか【いこい通信No.40】
「病院の整形外科に行って、膝の調子が良くないと訴えたら、先生から“膝の負担になるから正座しない方がいいよ”と言われました」
そう話される患者さんが多くいらっしゃいます。
それでもなお、当院では「もう一度正座ができるようになりましょう」とお伝えし(痛みの本当の原因を探した上で)治療をします。なぜなら正座をすることが丈夫な足腰・歪みの少ない姿勢をつくり、ひいては生涯の健康に大きく寄与するからです。
今回は正座の良さについて当院の考えをお伝えしたいと思います。
正座をする人の特徴

近年は椅子を使うことが多くなり、正座をされる方は少なくなってしまいました。しかし、今でも毎日正座をされている方にはいくつか特徴が現れます。
(1)足腰の骨や筋肉が丈夫で、膝関節の疾患がほとんどない
(2)年を重ねても自力で立ち座りができる
(3)足首が柔らかく、歩いていてもつまづくことが少ない
(4)背骨が左右どちらかに大きく歪むようなことがない
なぜこんな特徴が現れるのか、一つずつ説明していきます。
(1)足腰の骨や筋肉が丈夫で、膝関節の疾患がほとんどない
床からの立ち座りはスクワットをしていることとほぼ同じです。
正座をする・正座の状態から立ち上がる、たったこの動作だけでももの凄いパワーが必要であるということは想像いただけると思います。

例えばお年寄りは椅子だと楽に立ち座りができますが、床からの立ち座りは容易ではありません。
普段正座をされない方が正座をしようとすると「しゃがめない」「膝が曲げにくい」「力が入らなくてすぐに立ち上がれない」「関節がスムーズに動かない」と仰られます。なぜなら(日頃から足首や膝をしっかり曲げ伸ばしすることがないため)足首や膝の可動域が狭く、床から立ち上がるための筋肉がないからです。
しかし、正座をすると足首や膝の可動域は広がり、床から立ち上がるための筋肉がつきます。
また、骨は圧力が加わる(体重がグッとかかる)とカルシウムをつけて太く丈夫なっていく性質があるので、正座のためにしゃがむ・正座の状態から立ち上がることは脚の骨や関節を丈夫にします。
(2)年を重ねても自力で立ち座りができる
日常的に正座をされている方は正座をする・正座の状態から立ち上がるための体ができあがっています。そういう方は正座をやめない限り、いくつになっても自力で立ち座りすることができます。
(3)足首が柔らかく、歩いていてもつまづくことが少ない
正座をするためにしゃがむ・正座の状態から立ち上がる時は、両足首もしくは左右どちらかの足首は必ず反らします(背屈)。そして、正座をすると両足首は必ず伸ばします(底屈)。
この背底屈動作を無意識のうちに繰り返すため、足首は自然と柔らかくなります。

足首が柔らかいと、歩いていても(足首をしっかり上に反らすことができるため)つまづくことが少なくなります。
一方、足首が硬い方は歩くときにしっかり足を反らすことができないため、すり足気味になり、ちょっとした段差につま先が当たって転倒しやすくなります。
(4)背骨が左右どちらかに大きく歪むようなことがない
床に座るときの姿勢として、あぐらや立て膝、体育座り、横座りなどがあります。しかし、これらの姿勢をとると骨盤の高さに左右差が出てしまうため、背骨に歪みが生じます。(関連記事:いこい通信No.11)
骨盤の高さに左右差がある姿勢を毎日繰り返していると、どんどん体が歪んでいきます。
普段からたくさん歩いておられる方・多様な動きを生活の中でされている方であれば、ある程度の体の歪みは修復されますが、現代日本では車や自転車、公共交通機関が発達していて自分で歩かなくても済んでしまう場面が多いため、修復できないまま時間が経ち、大きな歪みとなって体に現われることは少なくなりません。
一方、正座の場合は骨盤の高さは左右同じになります。つまり、背骨が左右どちらかに大きく歪むようなことがないのです。
最後に
本記事を書くにあたって当院の山田院長にお話を伺ったところ、院長は「昔に比べて足腰が弱い人たちが増えた」と話されていました。今や椅子生活・ベッド生活が主流になり、年齢問わず床からの立ち座りをほとんどしなくなったことに加え、歩くことも少なくなったからです。
では、足腰が弱いことの何が問題なのでしょうか?
足腰は体の土台です。家で例えると基礎の土台にあたります。土台が弱く不安定だと、その上にある家も(特に2階、3階と上にいけばいくほど)大きな影響を受けます。

人の場合、足腰(土台)の上には背骨と頭蓋骨がのっています。つまり、足腰が弱いということは腰から頭にいたるまですべてに影響を及ぼすということに他なりません。(関連記事:いこい通信No.18)
骨だけでなくその中の内臓・神経・血管、そして精神状態までもを不安定にしてしまいます。
たかが座り方ですが、繰り返せば長い時間をかけて大きな影響をもたらします。毎日最低1回、たった数分だけも正座をすると足腰、ひいては心身を守ることにもつながります。
ぜひ取り入れてみてください。
宮川

