ステロイド剤(1):ステロイド剤の怖さについて【いこい通信No.47】

こんにちは、院長の山田です。

ここ最近、患者さんから「〇〇の症状が出たから病院に行ったんですよ」「美容外科で気になる所を取ってもらいました」という話題が出て、どんなお薬をもらったんですか?と尋ねたら『ステロイド剤』だった、なんてことがよくありました。

しかも、症状が治まったら服用を止めるのではなく、ダラダラと服用期間・塗布期間が長くなっていたり、ステロイド剤を使わずとも治まるような症状に対しても処方されているケースが多く見受けられました。

これに対して非常に危機感を感じましたので、今回は私の臨床経験の中からステロイド剤の怖さについてお話をしたいと思います。

約40年前、ステロイド剤の全盛期

私が病院に勤めていた頃(40年前)はちょうど、ステロイド剤投与が全盛期を迎えた頃でした。

当時、ステロイド剤は「万能薬」として重宝されており、投与するだけでリウマチの痛みやアトピー性皮膚炎の発疹・かゆみなど、さまざまな病気の症状が劇的になくなるため、病院では「病気の症状を抑えるために・・・・・・とりあえずステロイド」ということで次々患者さんに投与していました。

当時、病気の症状を抑えるという点においてステロイド剤はこれ以上ないくらいよく効く薬だったのです。本当に、ビックリするくらい。

しかし、手軽に・簡単に投与し続けた結果、患者さんたちの骨はボロボロになり、全身がむくみ、皮膚が荒れ、精神を病み、感染症などにかかっていきました。ステロイド剤の莫大な副作用が患者さんたちにのしかかったのです。

それ以降、病院側はステロイド剤の使用を極力控えるようになりました。本当に必要な時以外はステロイド剤は使わないということになったのです。

しかし最近になって再び、ステロイド剤の使用が増えつつあります。

こう書くと、皆さんは「昔は長い間、大量に投与したからダメだったんでしょ?今はきっと大丈夫」と思われるかもしれません。

しかし、微量のステロイドであっても「単発的に」「何度も何度も」使用し続ければじわじわと同じことが起こり始めます。それはなぜか順を追ってお話ししましょう。

ステロイドって何?

そもそも「ステロイド」とは、私たちの体の中でもつくられている「副腎皮質ステロイドホルモン・・・・」のことです。

副腎皮質ステロイドホルモンには三種類あり、その内の一種「コルチゾール」をまねてステロイド剤は作られています。

毎日生理的に分泌されているコルチゾール量は(個人差や生活環境によっても変化するため)正直なところ不明ですが、一説では約10mg/日ほどだそうです。このたった10mgのコルチゾールが日々の代謝や電解質の調整に関わっています。

また、ストレス(怪我や病気、精神的な負荷など)がかかった時は通常の約10~20倍のコルチゾールが分泌され、抗炎症作用や免疫抑制反応などを示します

※ もし、長期にわたってストレスがかかり続けると「副腎」はどうなるか?

ストレス下におかれると副腎は通常以上に働きます(副腎の膨張)。なんとか体を一定の状態に保とうとするからです。

しかし、いつまでもそんな状況が続くと、副腎は疲れ果ててしまい(副腎の萎縮)、機能が低下してホルモンを十分に作れなくなってしまいます。

私たち自身もそうですが、たった数日の激務・数ヶ月の多忙・終わりが見えている事柄なら何とか耐えられます。しかし、終わりが見えず、永遠と続くような状況に置かれると、どこかでプツンと切れて頑張れなくなります。それと同じことが臓器でも起こるのです。

ちなみに、臓器の膨張・萎縮は副腎だけに起こることではありません。

ステロイド剤について

例えば、内服薬としてプレドニゾロン錠というステロイド剤があります。プレドニゾロン1錠=生理的に分泌されるステロイドホルモン量となるよう調整されているそうです。

ステロイド剤(コルチゾールをまねて作られた薬剤)を使うと、通常以上のステロイドホルモンが体内に存在することになるため、あらゆる症状が激的に良くなります。ストレスがかかった時、副腎が通常の10~20倍のコルチゾールを分泌するのと同じような状況を作り出せるのです。

どうしても我慢できない症状を軽減させる目的、あるいは救急救命で一刻を争うような場面ではとても役に立つ薬だと言えます。

しかし、長期あるいは単発的に何度もステロイド剤を使い続けた場合、副作用が表に現れます。コレステロールや中性脂肪、血糖値、血圧が上昇したり、骨が脆くなったり(骨粗鬆症)、顔がむくみ(満月様顔貌)、皮膚が荒れ黒ずんできたりします。精神を病み、感染症にもかかりやすくなります

そして何よりも怖いのが、ステロイド剤を使い続けると副腎が自力でステロイドホルモンを作らなくなることです。

毎日必要以上のステロイドが外から供給されるため、副腎は働く必要がなくなります。副腎が自力でステロイドホルモンを作ることを止め、それでもなおステロイド剤を使い続けることを選択した場合、その人は一生ステロイド剤を手放せなくなってしまいます。

自力でステロイドホルモンを分泌できないわけですから、交通事故や災害など急激に強いストレスがかかればその人はあっという間に亡くなります

それだけではありません。副腎が働かなくなると「副腎の萎縮」が起こります。副腎の萎縮が起こるということはすなわち「人の死期」を意味します。短命になるということです。

最後に

今や病院だけでなく、ドラッグストアでもステロイド剤を簡単に購入できます。かゆみや痛みを消すために、皆さん簡単にステロイド剤を使います。

病院側も「この症状にはステロイド剤が効く。ステロイド剤しか方法がない/分からない」ということで、ステロイド剤がなくても治まるような症状に対して簡単に処方します。

長い目で人の「いのちと健康」を考えた時、本当にそれでいいのか私は疑問です。

山田