運動時にスポーツドリンク、脱水時に経口補水液を飲むのはなぜ?【いこい通信No.42】

こんにちは、スタッフの宮川です。

日頃、私たちは水やお茶などを主に飲んでいると思いますが、運動をする時は「スポーツドリンク」、脱水症になってしまった時は「経口補水液」の方が良いとされています。

ただの水(真水)よりも、糖分や塩分などが入った飲み物の方が良いとされるのはなぜでしょうか?

今回は、運動時や脱水時など水分補給が必要な場面において、なぜ真水よりもスポーツドリンク・経口補水液が良いとされるのかについてご紹介しようと思います。

体内の水分は真水ではない

ヒトの体は約60%が水だといわれています。

しかし、水道の蛇口から出てくるような真水がそのまま体内にあるわけではありません。体内の水分(体液)にはナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのいわゆる「電解質」が含まれています。

電解質とは、水に溶けると電気を通すようになる物質のことです。細胞の浸透圧や神経細胞・筋肉細胞の機能を調節する役割があります。

運動をしてたくさん汗をかいたり、脱水症を起こしてしまった時は水分だけでなく電解質も一緒に体外に排出されているため、水と電解質の両方を補給する必要があります。

そこで活躍するのがスポーツドリンクや経口補水液です。

スポーツドリンクと経口補水液の違い

スポーツドリンクと経口補水液は、失った電解質を水と一緒に補給できる飲み物です。大きな成分差はありませんが、含まれている糖分と塩分の量に違いがあります。

経口補水液500mlスポーツドリンク500ml
食塩量約1.5g約0.5-1.0g
糖分量約12.5g約15.0-40.0g

(引用元:経口補水液オーエスワン 経口補水液の適正使用について

食塩は失った電解質を補給するため、糖分は水と塩分を小腸で吸収しやすくするために含まれています。

経口補水液の方が速く吸収される

熱中症や下痢などで脱水症になってしまった場合、命を救うためにはより早急な水と電解質の補給が求められます。

そのため、経口補水液はスポーツドリンクよりも食塩量を多く・糖分量を少なくし、浸透圧を低くすることで、より速く水と電解質が体内に吸収されるようにつくられています。

なぜ、浸透圧が低いとより速く体内に吸収されるのでしょうか?

私たちの体において水分が吸収される場所は「小腸」です。小腸で素早く吸収されるためには飲み物(液体)の浸透圧が重要になってきます。

※浸透圧とは?

細胞膜は半透膜(特定の物質だけ通す膜)でできているため、細胞の内側と外側とで物質の濃度に差が生じると、細胞膜を隔てて濃度の濃い方に水が移動します。このとき生じる圧力のことを「浸透圧」といいます。

例えば、キュウリの塩もみは浸透圧のしくみを上手く利用した調理方法です。

キュウリを塩もみすると、キュウリの水分が抜け出て柔らかくなりますが、これはキュウリよりも塩水の物質濃度が濃いために、水が塩水に引かれて外に抜け出てくるからです。

ヒトの体液の浸透圧は「285±5 mOsm/Lミリオスモル」といわれているため、それよりも低い浸透圧のことを「低張性」・同じくらいの浸透圧を「等張性」・高い浸透圧を「高張性」といいます。

経口補水液は低張性、スポーツドリンクは(種類にもよりますが)等張性にあたります。

低張性の液体例)蒸留水、経口補水液
等張性の液体例)生理食塩水、5%ブドウ糖、スポーツドリンク
高張性の液体例)10%食塩水、20%ブドウ糖

小腸により速く吸収されるのは、体液よりも浸透圧の低い「低張性」の飲み物です。飲み物の浸透圧が体液よりも低ければ、物質の濃度差を埋めるために飲み物が小腸の上皮(=半透膜)を介して体内に吸収されるからです。

この浸透圧のしくみを利用したのが経口補水液です。

まとめ

  • スポーツドリンクや経口補水液を飲むと、水と一緒に電解質も補給できる。
  • スポーツドリンクよりも経口補水液の方が速く体内に吸収される。それは経口補水液が低張性の液体だから。

繰り返しになりますが、スポーツドリンクは運動をしてたくさん汗をかいた時、経口補水液は脱水症になり緊急を要する時にそれぞれ利用する飲み物です。

塩分や糖分が多く含まれているため、水やお茶のように日頃からガブガブ飲むことはオススメできません。

状況に応じてうまく使い分けて、体の健康を守っていきましょう!

宮川

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