骨はなぜ変形するのか?(2):変形の原因とその治し方【いこい通信No.9】

前回のいこい通信No.8では、運動をする中で赤ちゃんの骨はどんどん硬く、美しく成長するとお伝えしました。しかし、皆さまもご存じの通り、骨は時として変形することがあります。それはなぜか?

今回は骨が変形する理由と治し方についてお話をしたいと思います。

骨の形を決める要素

骨の形はひとそれぞれですが、その形を決める要素は2つあります。

一つ目は「遺伝子
まず、親からもらった遺伝子でおおまかな形が決まります。これは個人の努力云々では変えられない部分です。

二つ目は「体の使い方・運動
生まれてから死ぬまでの間、その人の運動の質と量で、骨の最終的な細やかな形が決まります。

事例:股関節

股関節を例にとって説明しましょう。

股関節は、すり鉢状の骨(骨盤)に、すりこぎ状の骨(大腿骨骨頭)がはまりこんで、くるくる動く構造です。すりこぎ状の骨頭の先は、見事な真ん丸の球になっています。

この骨頭は、赤ちゃんの時はまだ柔らかくおおまかな形しかありません。
これが「遺伝子」による形の決定です。

赤ちゃんはその後、成長の過程でめいっぱい運動します。

股関節をたくさん動かす中で、球の表面がまんべんなく磨かれて、大人になるにつれてきれいな美しい球状になっていきます。
これが「運動」による形の決定です。

きれいな形になるためには運動の質(多様で大きい動き)と、運動の量(たくさん)ともに必要です。

繰り返しになりますが、骨の形の決定因子は、運動の質と量です。
これはあらゆる骨の変形性疾患を治す上でも、非常に重要になってきます。

変形の原因とその治し方

さて、ここから変形性関節症の本題です。

骨の変形の原因は、今回と前回のいこい通信No.8を読まれた方はお分かりかと思います。

運動をしたり、歩いたり、家事したりが少ない人、日常のあらゆる場面で体を動かすことが少ない人、また、体を動かすときに動きが小さく、偏った動きでチョコチョコと動く人…。

そんな生活上の癖や習慣がある人ほど、骨は変形しやすく、またその癖を正さないままだと、いつまで経っても治ることはありません。

「私は骨粗鬆症だから」とカルシウムを摂取しても、そのカルシウムを「骨」にくっつけるためには、たくさんの「運動」刺激が必要です。

「運動」刺激がないままカルシウム剤だけ飲んでも、行き場のない大量のカルシウムは血管壁に沈着して、かえって動脈硬化の一因となってしまいます。

普段の家事、いつもの帰り道など、何気ない日常の中でふと気がついたとき、

「今日は少し歩いてみようかな」
「今だけ歩幅を大きくしてみようかな」

と行動をしてみる。そんなちょっとした積み重ねから始められるのが良いかと思います。

沼井