花粉症と抗ヒスタミン薬(2):抗ヒスタミン薬の服用に伴う「揺れ戻し」【いこい通信No.24】
前回のいこい通信No.23では、抗ヒスタミン薬がどのようにして花粉症の症状を緩和させているかお伝えしました。無事に不快な症状を緩和できた!バンザイ、めでたし、めでたし…とはいきません。問題はこれから先に起こってくるのです。
今回は、抗ヒスタミン薬の服用に伴う「揺れ戻し」についてお話しします。
揺れ動きながらバランスを保つ「生体」
言うまでもありませんが、私たちの体は機械ではありません。
いつも同じ動きをする機械であるのなら、情報を伝達するための道筋を抗ヒスタミン薬でちょいと遮ってあげれば、簡単に情報を止めることができます。テレビやラジオの電源(情報を伝達するための道筋)を切れば、画面や音(情報)を簡単に止めることができます。
機械の場合は毎回、同じ方法で、同じ結果を得ることができるのです。
ところが、私たち生体の活動は機械のように成り立っていません。絶え間なく動きながら、できるだけ一定の状態に、バランスを保とうとしています。
体の姿勢(関節や筋肉の動き)から血圧、心拍数、体温、呼吸数、血糖値にいたるまで、その時その時の状況で刻々と変化し、それでいながら、ある一定の範囲でバランスを保って安定しています。それはちょうど、やじろべいや天秤ばかりが前後左右に揺れて、一見不安定に見えていながら、動的に安定しているのと同じです。

抗ヒスタミン薬の服用に伴う「揺れ戻し」
では、絶え間ない動きの中でバランスを安定させている「生体」に対して、意図的に外から手を加えるとどうなるでしょうか?
いっときバランスが崩れ、普段は起こらない「揺れ」が生じ、まもなく「揺れ戻し」が起こります。
抗ヒスタミン薬を飲めば、確かに花粉症の症状は緩和されます。
ただし、その効果は「その場に限って」和らぐに過ぎません。

生体は、抗ヒスタミン薬によって情報伝達の道筋が遮断され続けると、それを異常とみなします。
するとまず、肥満細胞がヒスタミンによる情報伝達が上手くいっていないことを察知し、より多くのヒスタミンを放出するようになります。
ヒスタミンの受け手である鼻粘膜の細胞も、ヒスタミンを受け取るためのヒスタミンレセプター(受容体)が抗ヒスタミン薬(まがいもののヒスタミン)によって使用済み状態にされていることを察知し、細胞の表面にヒスタミンレセプターを増設します。
これらの動きは、何とか元の状態に戻りバランスを保とうとする「生体の抵抗反応」です。
こうなると、次に花粉(異物)が体の中に入ってきたときは、より多くのヒスタミンが放出されるようになり、増設されたヒスタミンレセプターがそれらを次々受け取ってしまうため、薬を服用する前よりももっと大きな防御反応(アレルギー症状)を起こすようになります。
つまり、より過敏な花粉症体質(アレルギー体質)へと発展するのです。
これが抗ヒスタミン薬の服用に伴う「揺れ戻し」です。
次回
抗ヒスタミン薬の作用は、花粉症にとどまりません。
ヒスタミンは体のあらゆるところでその役割を果たしているため、抗ヒスタミン薬を服用すると鼻粘膜以外にも影響を及ぼします。特に、脳への影響は注意しなければなりません。
次回は、抗ヒスタミン薬が脳にどのような影響を与えるか。また、抗ヒスタミン薬に限らず、薬を長期的に服用するとどういうことが起こるかについてお話ししたいと思います。
沼井