花粉症と抗ヒスタミン薬(3):薬の長期的な服用はかえって治癒を遠ざける?【いこい通信No.25】
前回のいこい通信No.24では、抗ヒスタミン薬を服用すると、その反動でより過敏な花粉症体質(アレルギー体質)になりかねないとお伝えしました。
しかし、抗ヒスタミン薬の影響は花粉症にとどまりません。体のあらゆるところ、特に脳への影響は無視してはならないと私は考えています。
今回は、抗ヒスタミン薬が脳にどのような影響を与えるか。また、抗ヒスタミン薬に限らず、薬を長期的に服用するとどういうことが起こるかについてお話をしたいと思います。
抗ヒスタミン薬が脳に与える影響
抗ヒスタミン薬の副作用の一つに「眠気」があります。
花粉症のアレルギー症状を緩和させるために処方された薬で、なぜ眠気が現れるのでしょうか?
実は、私たちの体にもともと備わっているヒスタミン(情報伝達物質)は、肥満細胞と鼻粘膜の間だけに存在しているわけではありません。体のいたるところで情報を伝達するためにはたらいています。

脳にもヒスタミンと、それを受け取るヒスタミンレセプター(受容体)があります。
脳内のヒスタミンは集中力や判断力、意識の覚醒などに関わっており、日常生活において欠かせない部分を担っています。もちろん、アレルギー症状とは全くの無関係です。
しかし、抗ヒスタミン薬にそれを判別することはできません。
そのため、抗ヒスタミン薬が鼻粘膜だけでなく脳にまで入り込んでしまうと、脳内にあるヒスタミンレセプターをも塞いでしまいます。すると脳の機能が低下し、自分でも気づかないうちに集中力や判断力がなくなって、ぼんやり眠気に襲われます。
これが「眠気」の副作用の仕組みです。
近年、こういった副作用が出にくいといわれている抗ヒスタミン薬もありますが、あくまで眠気に襲われ「にくい」だけで、脳機能の低下を免れるわけではありません。
短期的には意図する効果、長期的にはより重い症状へ

より過敏なアレルギー体質も、眠気をはじめとする副作用の数々も、薬が体に与える影響は長期的に服用すればするほど大きくなります。
それはなにも抗ヒスタミン薬に限った話ではありません。
薬の多くは抗ヒスタミン薬同様、私たち生体のとある情報伝達の道筋に介入し、伝達を邪魔したり遮ったりすることで作用を示します。すると、短期的には意図する効果が得られます。
しかし、長期的には逆の、より症状を重くする方向に「揺れ戻し」がきます。
薬がだんだん効かなくなり、より大量に、もしくはより強い薬を服用しなければならなくなるのは、本来あるべき自然の状態に戻そうとする「生体の抵抗反応」です。
この反応は、ほとんどの薬で起こります。よく知られているのは、睡眠薬や精神安定剤などの向精神薬、血圧の薬や胃腸薬などです。
薬の長期的な服用は治癒を遠ざける
アレルギー疾患の場合、よくステロイド剤が使われます。ステイロイドホルモンは体の中でもともと作られている物質ですが、それを薬で長期的に補った場合、どのようなことが起こると思いますか?
「補ってあげるんだから良いことじゃないの?」
確かに良い側面もあります。しかし、そればかりではありません。
ステロイド剤を服用し続けると、私たちの体は「え?外からステロイド入ってくるの?じゃあ、もう作らなくていいよね」ということで、ステロイドを作ることをサボるようになります。
そうやって体がサボればサボるほど(ステロイド剤を長く使えば使うほど)、自力でステロイドを作ることができなくなっていきます。
だから、薬の服用を急に止めると、十分な量のステイロイドホルモンを体内で作ることができず、ステロイド不足でさまざまな不調症状が現れます。
同じことが他のホルモン療法、インスリン療法、便秘薬でも起こります。
「えぇ?便秘薬が?」と思うかもしれませんが、長期的に薬に頼って自分の力で排便しなくなると、腸の排便機能が低下して、ついには自力で出せなくなってしまいます。
こういうことからも、長期的な薬の服用はかえって治癒を遠ざけるということがわかります。
補足
薬の欠点ばかりお話ししましたが、決して薬がダメだと言いたいわけではありません。救急救命の現場はもちろん、普段の生活でも「ここぞ!」と踏ん張らなければならないときはどうしても必要になります。
しかし、薬に頼りきって、ずるずると長く飲み続けてしまえば、治癒どころか逆に大切な体を傷つけてしまいかねないということを、どうか心にとめておいてください。
次回
花粉症をはじめとするアレルギー性疾患は「治す」というより「いかに体内の不要物を捨てるか」が肝心です。それを踏まえて、次回は花粉症対策のお話をしたいと思います。
沼井