腰痛と自転車(1):骨盤は背骨の土台、骨盤が不安定になるとどうなるのか?【いこい通信No.18】
通勤、通学、買い出し、子どもの送り迎えなど、自転車は私たちの日常に溶け込んだ存在です。
しかし私たちの体の構造上、自転車が腰痛の原因となることがあります。
今回は腰痛と自転車の関係について、順を追ってお伝えしていきたいと思います。
骨盤(仙腸関節)とは?
本題に入る前に、まずは私たちの体「骨盤(仙腸関節)」の構造について説明していきます。その理由は最後にお伝えします。
以前、寝腰のお話をしたときと同じ内容ですので、ご存じの方は後述の「人の背骨は骨盤を土台とした25階建てのビル」からお読みください。
図のように、「骨盤」は背骨の一番下にある逆三角形の形をした「仙骨」を、左右両側から「腸骨(寛骨)」が挟み込むようにしてできています。これをまとめて「仙腸関節」といいます。
このような形のものが安定するためには、それぞれの骨が中心に向かって押し合う必要があります。特に人の仙腸関節は、上からの垂直の力と左右からの挟む力が同じように伝わるようにできています。
両脚で立つと、上半身の重さが仙骨にかかってくる(上からの垂直の力)のと同時に、床からの力(反力・抗力)が股関節をへて腸骨にかかります(左右からの挟む力)。
すると骨盤を中心に3つの力が均等に押し合って、安定した形を取ることができます。
こうした構造のおかげで、私たちは真っ直ぐ二本足で立ち、どこまでも歩くことができるのです。
人の背骨は骨盤を土台とした25階建てのビル
私が学生だった頃、昔の解剖学書には、仙腸関節は不動関節…つまり、動かない関節と書かれていました。手足の関節や背骨などの関節に比べて、外から見ても動きが見えないためです。
しかし実際は、仙腸関節は体の動きや足の動きによって、ほんのわずかですが前後左右に動きます。
「関節の動きがわずかしかないなら、たいしたことないんじゃない?」
そんなことはありません。
言うなれば仙骨(骨盤)は上半身の土台です。家で例えると、基礎の土台にあたります。
家の土台がわずかに傾いたりゆがんだりすれば、その上に建っている家の建物、特に2階、3階と上に行けば行くほど大きな影響を受けます。
人の場合、骨盤という土台の上に腰の骨(腰椎)が5個、その上には胸の骨(胸椎)が12個、首の骨(頚椎)が7個、そして脳をおさめている頭蓋骨があります。つまり、骨盤を土台とした25階建てのビルだといえます。
その土台(骨盤)がたとえわずかでも傾いたり、ゆがんだりすれば、その上の腰やお腹、胸、首、そして最上階の頭はものすごく影響が大きいことが容易に想像できると思います。
骨だけでなく、その中におさまっている内臓・神経・血管などすべてが膨大な影響を受けます。
ただし、人の場合は途中に何ヶ所かでその傾きやひずみを補正するようにできているため、ピサの斜塔のように土台が傾いても上半身がすぐ傾くことはありません。
しかし、土台(骨盤)の傾き・ゆがみを補正するためにさまざまな場所に負担がかかり続けると、時間がたつにつれて破綻をきたし、病気になっていきます。
腰痛と自転車の関係
何かしらの要因で仙腸関節(土台である骨盤)が不安定になると、まず自覚症状として現れるのが「腰痛」です。そして、仙腸関節を不安定にし、ゆがませてしまう要因の代表が今回の本題である「自転車」です。
次回はそのお話をしていきます。
沼井