腸内環境を整えることの大切さ(1):私たちの健康を支える「腸」について【いこい通信No.27】
この冬から春にかけて、高槻市の小学校や幼稚園では急性胃腸炎が流行っています。
一般的に腸は「食物が胃で溶かされた後、その中の栄養や水分を吸収する器官であり、大きく小腸と大腸の2つに分けることができる」とされています。
しかし、腸は食べ物を消化吸収する以外にもたくさんの働きをしている、とても賢い臓器であることをご存知でしょうか?
腸は生命の起源
生き物の進化においてはまず腸ができ、その周りに神経系ができます。脳(中枢神経系)ができるのはその後です。
原始的な生き物、例えばヒドラなどの腔腸動物に脳はありませんが、腸の中に神経があり、腸が脳の役割を果たしていました。
生き物にとって「腸こそ生命の起源」といっても過言ではないくらいです。
そこから時代を経て哺乳類、さらにヒトにいたって、神経はとても複雑に発達しました。
ヒトの脳は、物事を正確に記憶し判断をするため、また複雑な社会に対応するために1000億個もの脳細胞が複雑に組み合わさってできています。
しかし、もともと腸こそが神経系のはじまりであり、腸には大脳と同じくらいの数の神経細胞があります。脳が「偉く」て、腸が「従っている」という主従関係が今では間違っていると分かっています。
従来考えられてきたよりも腸はとても賢い臓器なのです。
腸はとても賢い
例えば、食べ物が安全かどうかの判断。
目で見てもほとんどわかりませんが、腸は判断できます。
腸炎を引き起こすウイルスや食中毒を引き起こす細菌が食べ物に混ざって腸に入ってくると、腸の神経細胞が即座に判断を下し、すべて出してしまおうとして嘔吐や下痢などの激しい拒絶反応を示します。
そして、身体全体に症状が出ないよう防波堤になって守ってくれています。

また、腸には身体の免疫細胞の60~70%が集まり、体の免疫に密接に関係する器官でもあります。
腸の免疫システムは、100兆以上のさまざまな細菌が棲みつき形成される「腸内フローラ(腸内細菌叢)」が主にコントロールしています。
腸内フローラが与える影響はアレルギー、癌、免疫、睡眠、記憶、さらには幸福を感じる感情にもおよび、ヒトの行動すら変化させることがいろいろな研究で明らかになっています。
つまり、腸内環境を整えることは、心身の健康を整えるための大きな土台になるのです。
次回
これから数回にわたって「腸」と「腸内環境」を整えることの大切さについてお伝えしていこうと思います。
次回はその前置きとして、私たち生き物はお互いに関わりあって生きているということをお話しします。
沼井