腸内環境を整えることの大切さ(2):生き物はお互いに関わりあって生きている【いこい通信No.28】
現代日本に暮らす私たちは、コンクリートのビルにとたくさんの電子機器に囲まれた都会の生活に慣れ、自然のあるべき姿からどんどん遠ざかっています。日常的に土に手を触れることもなくなりました。
いつの間にか自分たちは、他の動物とは違うんだ、特別な存在(万物の霊長)なのだと勘違いするようになっています。本当は、ヒトは壮大な自然のほんの一部にしかすぎないことを忘れつつあります。
今回は植物、動物、細菌・微生物のつながりと循環についてお話をするとともに、ヒトの腸についても考えてみたいと思います。
自然では土の栄養に、街ではゴミとして扱われる葉っぱ

山を歩いてみると、不思議なことにいつも森や林の中はきれいだなと思います。鹿やイノシシなどの動物の死骸は見あたりません。
また、ブナなどの落葉樹は秋になると紅葉し、やがてそのすべての葉っぱを落として木は丸裸になります。晩秋から冬にかけて、地面に枯れ葉が積もるのは見られますが、その他の時期はいつもきれいです。
秋の田んぼの稲刈りが終わると、コンバインで稲の藁が裁断され田んぼにまかれますが、春になると藁は跡形もありません。まるで誰かが掃除をしたようにきれいになっています。
これは小さな虫やミミズ、土の中にいる微生物・細菌が落ち葉や枯れ葉・藁を食べて粉々にし、土の栄養素にした結果なのです。
一方、自然の土が少ない街の路地や公園では、秋の終りにイチョウやケヤキなどの落ち葉や枯れ葉をきれいに掃除する「土の中の掃除屋さん」の虫や微生物・細菌などがいません。落ち葉は人間が掃除して集め、ゴミとして捨てられてしまいます。
自然はつながりと循環で保たれている

自然界では植物、動物、細菌・微生物がお互いに関わりあって生きています。
いえ、関わり合っているという言葉ではまだ生ぬるいかもしれません。互いに依存し、生きていくのに必ず必要な関係です。
植物は水と二酸化炭素からブドウ糖をつくる「生産者」
動物はそれを食べ物とする「消費者」
細菌・微生物は枯れ葉や落ち葉、動物のフン(排泄物)や死骸を食べ、無機質に分解する「分解者」
細菌・微生物にとって無機質は排泄物ですが、植物はそれを栄養素として取り入れます。
こうして植物、動物、細菌・微生物はお互いに循環しつながっています。そして、そのどれが欠けても他の生き物の「生命」は成り立ちません。
植物の根と人間の腸は同じ構造

「根源」「根本」「根幹」という語が示すように、「根」はものごとの成り立ちを支える最も基本になるもの、礎を意味します。
植物の根っこはその字の通り『生命の根源』の働きを担っています。
植物は根の表面にある根毛から栄養と水を吸収し、茎や葉に供給しています。ですから、その大切な根と直接つながっている土の環境が、植物全体の生育と健康状態を大きく左右します。
この栄養の吸収作業に深い関わりがあるのが、土の中のミミズや虫などの小さな動物や微生物です。
土の中に良い微生物が多く棲んでいれば、彼らが落ち葉や動物のフンや死骸から良質のミネラルなどの栄養素をたくさんつくり、植物はこれを吸収して元気に成長することができるのです。
微生物や虫が活発に動き回ると、保水力豊かなホクホクの良い土がつくられ、根毛もより発育し栄養の吸収率が一層アップします。
私たちの体にも、これと同じ仕組みが備わっています。
「根」にあたるのが「腸」
「土壌細菌」にあたるのが「腸内細菌」
「根毛」にあたるのが、腸壁にびっしりしきつめられた「微絨毛」
さきほどの植物の話と同様に、腸の中によい腸内細菌がいっぱいだと、しっかりした微絨毛がつくられます。
植物が土壌細菌と共生関係にあるように、私たちヒトは腸内細菌と共生関係にあります。私たちの体の中では、自然の野山と同じ世界が繰り広げられているのです。
次回
ヒトを含むどんな動物も微生物なしでは生きていけません。自然界だけでなく、体内や肌の上に多種多様な細菌や微生物が棲んでいてくれるから生きていけるのです。
次回は、私たちのお腹にいる腸内細菌がどのような役割を果たしているかについてお話をしていきます。
沼井