情報社会と私たちの脳、情報過多は脳をオーバーヒートさせる【いこい通信No.32】

現代日本はすっかり情報社会になり、誰でも簡単に世界中のさまざまな情報を得ることができるようになりました。社会は発展し、私たちのまわりは便利なものであふれかえっています。ボタン一つで買い物や炊事洗濯ができるほどです。

しかし、身のまわりの人たちをよくよく観察してみると、情報社会がもたらした弊害へいがいがもろに出ていると感じます。

今回は情報過多と脳の関係、そして情報を入れすぎることの怖さをお伝えしたいと思います。

情報過多は脳をオーバーヒートさせる

私たちの脳は、無限に情報を処理できるわけではありません。

脳はコンピュータのようなものなので、処理する情報が多ければ多いほどオーバーヒート(過熱)し、処理できなくなれば思考が停止、あるいは失神します。

例えば、コンサート会場で大きな音や光、精神的興奮によって失神する子がいます。あれは目や耳から膨大な情報が一気に入り、脳が処理しきれなくなったために起こります。

脳が「失神」という手段を取るのには理由があります。

膨大な情報が一度に外から入って来ると、脳内の電気使用量が増えてオーバーヒート(過熱)するため、脳の温度が急激に上がります。

いこい通信No.5でもご紹介しましたが脳は熱に弱いため、熱による破壊を防ぐために脳の機能を低下させる必要があります。それが「意識を失くす」、つまり失神という手段なのです。

失神とまではいかなくても、冷静な判断ができなくなってパニックになることもあります。

情報過多は人を考えなくさせる

(1)記憶するだけで精一杯

たくさんの情報や知識を教えられると、脳はそれを記憶するだけで精一杯になってしまいます。自分で考える余裕をなくし、教えられたことだけを繰り返す人になってしまいます。

私自身の学生時代の経験も含め、今の子どもたちを見ていると、よりそう感じます。

(2)情報処理に意識をとられ過ぎる

スマホやテレビ、パソコンを通して毎日たくさんの情報を脳に入れていると、その情報処理に多くの時間と労力を使わざるをえません。

興味のある内容ばかりがピックアップされてくるので、なおさら情報ツールを開きたくなります。その結果、画面ばかりに集中し、まわりの人に意識を向けることができなくなってしまうのです。

実際、バスや電車の車内、家族や友人との食事の場、道を歩くときでさえスマホを使用している人は日常的に見かけます。

(3)上辺だけの情報を信じ込む

言い方は悪いのですが、今では誰でも簡単に「匿名で」「真偽も定かでない情報」を垂れ流せるようになりました。その情報を簡単に信じ込み、深く追求しようとしない…というよりも、自分で考える余裕や意欲、習慣を削がれているのは問題があるように感じます。

(4)人を羨み、自分と比べる

生活が便利になり、また誰もが多くの情報を知ったことで満足ができなくなり、ほんの些細ささいなことでも不満を口にするようになりました。

気を許せる家族や友人がいて、お腹いっぱい食べれて、帰る家があって、遊びに行ける場所がある。不自由がなく十分幸せです。

しかし、テレビ番組やSNSで「世の中にはこんな美味しいものがあるよ」「ペットを飼うとこんなに充実するよ」「この装いだと素敵だよ」「この家電は便利だよ」と、情報として見せられると、私もこうなりたい。もっと幸せになりたい。もっともっと…と際限のない欲望に駆り立てられていきます。

現状に満足できなくなり、自分とまわりを比べて不平不満がつのり、どんどん心が不安定になって、幸せを求めているはずなのに逆に不幸になっていくという負の連鎖が起こります。

(5)不安でいっぱいになり、何もできなくなる

飲食店の口コミから病気の情報まで、ネット情報を漁れば漁るほど、どんどん不安になるような情報が入ってきます。先を案じて失敗を恐れ、不安で足がすくみ、自分から何かをしようとしなくなります。

情報に振り回され続けると?

情報に振り回されて、目が回るほど忙しい状態が続くと、本当に「めまい」を起こします。

うつやパニック障害、自律神経失調症、糖尿病、がん、リウマチなどの膠原病こうげんびょう、甲状腺疾患などは、心の中に悩みや苦しみの情報をいつまでも持ち続けることによっても起こります。

この情報社会の中で、自分の心身を守るためには「いらない情報は入れない・見ない」「いらないと思ったものは意識してでも忘れる」ことが必要です。

そして、時にはスマホやパソコン、テレビから離れて自然の中をゆっくりと歩くことをおすすめします。歩くことで、頭に溜まった電気を大地に放出することができます。

氷枕をして眠り、頭を冷やしてあげることも効果的です。

何事もほどほどが一番。自分の許容範囲内で情報を入れ、判断し、現代の便利な恩恵を享受きょうじゅしていきたいものです。

沼井